プロジェクト概要
プロジェクト名:麻布台ヒルズ
都市:東京
認証システム:LEED ND v4 plan
認証取得日:2021年3月9日
認証レベル:プラチナ
インタビューを受けた人:森ビル株式会社 村田麻利子 様
インタビューした人:GBJ運営委員 宮本順子
昨年11月にオープンした、麻布台ヒルズのLEED認証について、森ビルの村田麻利子さんにお話しをうかがいました。
Photo of Mariko Murata
グリーンビルディングジャパン 宮本順子(以下、宮本):
虎ノ門ヒルズに続き、「麻布台ヒルズ」でもLEED v4 NDプラン認証でプラチナを取得されましたが、2プロジェクト続けてLEED NDを取得することとなった経緯を教えていただけますか。
森ビル株式会社 村田麻利子(以下、村田):
2023年には「麻布台ヒルズ」と、虎ノ門ヒルズの4棟目のタワー「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」が「開業しました。計画を立てて行く中で、森ビルの都市開発における考え方に合致するところが多く、世界的な高いスタンダートとしての認証があると知り取り組んだものになります。LEED NDは環境性能のみでなく社会的なインパクトについても評価する点等を鑑み、当社の開発を一言で世界中の方に伝えるツールになると考えて取り組みました。
宮本:
麻布台ヒルズはオフィス街の中心にありながら、自然豊かで、24,000m2の緑化面積があるとお聞きしました。何と果樹園まであるとのことで、まさに都会のオアシスですが、利用者の反応はいかがでしょうか。
また、貸し床面積を少しでも多くしたいというのがデベロッパーの使命といいますか、その中でこれだけの緑地、広場を確保することに対して、社内で意見の相違はありませんでしたでしょうか。
村田:
都市の本質を考えて計画を立てて行く中で、まず中央に広場を設置し、その後空いたスペースに建物を配置しています。そのため6,000㎡の中央広場を含む多くの面積で緑化を実現することができました。
社内のオフィスや商業施設、住宅などの各施設においても、都市づくりにおいて豊かな環境は欠かせないと考えは一致しておりました。
宮本:
麻布台ヒルズエリアは、もともとの敷地の状況の影響もあり、かなり不整形で高低差の大きいエリア設定になっているようですが、このことがLEED NDの認証取得にあたり、有利に働いた点、不利に働いた点がありましたら、教えていただけますか。
村田:
高低差のある地形だったため、敷地全体に水辺や水の流れを創り出し、従来の地形を引き継いでいる点、また、隣接する八幡神社の斜面緑地は豊かな生態系を育む拠点になりうるため保全をしている点は、LEEDにおいても評価をされました。
宮本:
麻布台ヒルズプロジェクト全体でLEED認証を取得するにあたり苦労した点を教えていただけますか。
村田:
国内と世界基準のギャップがありました。「節水」「換気箇所」「喫煙所の整備」など、LEED認証の項目として設けられたものの中には、日本の開発では具体的な基準が設けられていない項目もあり、個別に検討が必要になった箇所がありました。ただし、それらの基準は当社の都市開発における考え方や取り組みに合致している点が多かったため、高いランクを目指し取り組みました。
宮本:
そんなご苦労の中でも高いランクを目標にされ、達成しているのが素晴らしいです。LEEDにフォーカスしたのは、やはり海外企業の誘致や利用者に外国の方が多いことがありますでしょうか。
村田:
世界各国で広く利用され、国際的な認知度も高いLEED認証を取得することで、主に外資系テナントからの評価が上がり、営業上の競争力の強化に繋がると考えています。
実際に、海外企業に限らず環境に対する視座の高いオフィステナントや商業テナント、街のパートナーを迎えることができ、今後街を運営していく中でも協力していけると自信を持っています。
また、LEED認証を取得した後に実感したのですが、日系企業のテナント様からもLEEDはとても評判が高いです。
宮本:
環境に良いこととわかっていても、コストがかかるからと躊躇する会社も多い中、森ビルさんはその逆で、コストをかけて環境を大切にされていますね。
村田:
パブリックアート等と同じ考えだと思います。当然最初はコストになりますが、それ以上の価値になることは間違いなく、当社では先行投資として環境への配慮は惜しみません。
当社は東京を他の都市に負けない、インパクトのある都市にすることを目標の一つとしています。
宮本:
自社だけでなく、東京のためにもデザインをされているということ、東京都民としてもとてもありがたいお話です。今後も森ビルさんが手がける、都市と自然が一体となった開発をレポートしてまいります。本日はありがとうございました。
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