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第77回GBJセミナー &lt;募集時セミナー案内はこちら&gt; [今こそLEED Zero -Elevating Sustainability with LEED Zero to achieve carbon neutrality-] 2024年3月28日（木） 会場 講師：Brown (Chenbo Xu )他、USGBC North Asia 1. 開催レポート 今回は、4年ぶりにオンライン配信なしのセミナーでもあり、セミナー参加者とは、日本のZEBの考え方をめぐり白熱したディスカッションも行われました。 本セミナーのメインプレゼンテーションでは、LEED Zeroに4種類がある中の、LEED Zero carbonに焦点を当てた説明や、LEED Zero energyとの違いについても解説されました。 LEED Zeroシステムとは、2018年に世界グリーンビルディング協会（WorldGBC）が開始したネットゼロ推進というコミットメントに従うものである。 建物のライフサイクルにおけるカーボンをゼロにするための考えには、エンボディドカーボンとオペレーショナルカーボンの面がある。 LEED Zeroを決めるのは、シンプルな数式ではあるが、carbonには交通によるカーボンが含まれたり、energyには一次側のエネルギーが含まれたりしており、式を理解する必要がある。 Zero達成のためには、オンサイトの再生可能エネルギーが最優先されるが、都市ではオフサイトPPAや証書も活用できる。 将来のシステムではエンボディドカーボンが取り入れられる。 中国の事例では、マクドナルド店舗で、新築のLEED BD＋Cを取得後、世界初LEED Zero carbon, energyをダブルで達成した。新築だけでなく既存の上海にある図書館が改修よりZero carbonを達成した。 今回のセミナーを通じて、ネットゼロの達成は困難ではあるが、決して乗り越えられない要件ではないことが示されました。 後半のプレゼンテーションでは、LEED APなどの有資格者コミュニティ（グリーン人材）が、グローバルでサステイナビリティをけん引していることが強調され、他の資格の紹介もありました。 USGBC North Asiaの一行は、今回の来日で近三ビル、ウグイスビルといった、LEED O&amp;Mを取得済みの既存ビルを訪問し、既存ビルがカーボンニュートラルに果たす貢献を学んでおり、知識や事例の共有や理解を深めるとてもよい機会となりました。 本セミナーはオンディマンドウェビナーとして、会員限定で公開しています。LEED資格のCE hourとして認められていますので、ぜひ最後まで聴講してください。 会員向けにセミナー内容を公開しています。ログインしてご覧ください。 ここからは会員のみに表示されています。 2. オンディマンドウェビナー LEED ZERO日本語訳文 LEED Zeroとは LEED Zero取得までの道のり LEED Zero energyとcarbonの違い LEED Zero carbonの事例 3. Q&amp;A Q1. LEED Zeroの再認証に関して、各LEED認証には再認証の制度がありますが、LEED Zeroも再認証が必要なのでしょうか？ LEED Zeroは運用パフォーマンスに重点を置いています。LEED BD＋CもしくはLEED O＋Мの認証取得が前提ですがこの二つを両方取得する必要はありません。例えばLEED BD＋Cの認証を取得している場合、LEED O＋Мを取得する必要はありません。例えば、LEED認証を過去に取得していない既存ビルの場合、LEED Zero Carbonを取得したい場合にはLEED O＋МをLEED Zero Carbonと同時に申請する必要があります。その後に運用データを評価していきます。 LEED Zero Carbonは新しいプログラムであり、LEED BD＋CやLEED O＋Мとは異なり、運用パフォーマンスのみに注目するプログラムです。認証では運用データを評価します。LEED Zero Carbonは3年毎に再認証が必要です。 Q2. 事例としてあげて頂いたマクドナルド北京店は2,000㎡という大規模な太陽光パネルを設置しています。それだけの規模であればゼロにすることは可能だと思います。新築のビルであれば同様の太陽光発電設備を導入することが可能だとは思いますが、既存の雑居型のオフィスビルや住居ビルに関してはその規模の太陽光システムを導入することは困難であり、既存のビルであればメンテナンスのコストと頻度が負担となりゼロを達成するのは厳しいと思います。資料などを参照すると既存の築年数が経っているビル、住居ビルは目標達成が2050年であっても難しい。LEEDではこのような小規模のビルをどのようにしてネットゼロ達成可能にすることができるのでしょうか？ 確かに現時点ですべてのビルがネットゼロカーボンを達成するのは容易ではありません。商業プロジェクトに関してはネットゼロカーボン達成に向けたさまざまなアプローチを提案しています。プレゼンでも示しましたがオンサイトの敷地内に十分な再生可能エネルギー施設を導入できない場合にはオフサイト再生可能エネルギーを利用することができます。グリーンパワーを地域のサプライヤーから購入することもひとつの方策です。近三ビルは70％の電力を地域のサプライヤーのグリーンパワーから購入しています。中国でも同様に十分な再生可能エネルギー施設導入が厳しい、敷地面積のない商業ビルがたくさんありますので、地域のエネルギーサプライヤーを見つけてグリーンパワーを購入することを推奨しています。 カーボンニュートラルを達成しようとするのであれば、建物だけの話ではありません。エネルギーを供給する側も関係してきます。PPAやRECを受け入れる理由もそのひとつです。直接的にそのエネルギーをプロジェクトに供給するわけではありませんが、そのような活動が再生可能エネルギー業界の発展に寄与することになります。 大規模な商業施設の場合は投資家やクライアントの依頼がなければ、ネットゼロカーボンにあまり躍起になる必要はないと思います。Zero Carbon Readyという新たなコンセプトもあります。電化ビル、ボイラーをヒートポンプに変える、グリーンパワーを購入するなど準備的な活動をするという試みが欧州でも取り入れられています。 Q3. すでにその様な試みを日本では行っていると思います。ZEBもその一つです。LEEDは日本の小規模プロジェクトや既存ビルに対してどのように導入され、その違いを出せるのでしょうか？日本ですでに導入されているゼロエネルギーやそれに近いビルを実現させるコンセプトとLEEDはどのような違いがあるのでしょうか？ 【A1】LEED Zeroはその達成に高いハードルを設定しています。すべてのプロジェクトが容易に取得はできません。これがLEEDの戦略です。例えば高い効率で運用可能な日本のビルがあると仮定します。ある基準でネットゼロを達成したとしても、それではLEED Zeroの認証を確定することはできません。各国で文化と技術が違うからです。プロジェクトが達成可能であるネットゼロビルのより良い規定をLEEDに設定したいと思っています。技術的なアプローチに関しては各国市場に合わせて検討できる余地を設けています。 【A2】LEED Zeroは実績を基にしたシステムであり、一年間データを取得し、それに対してゼロを証明することになります。一方で日本のZEB,ZEHなどは計算を基にしたもので実績データを基にしていません。国交省が定めたベースラインに基づいて評価しており、LEEDのようにPlug Loadやプロセスエネルギーのような項目が含まれていません。 【A3】日本のZEB認証に関しては十分に理解してはいませんが、2018年にLEED Zeroが導入された時点でそれ以前からZEBが導入されていることは知っており、日本でのLEED Zero導入の良い基盤になると思いました。他の市場でLEED Zeroが発展している理由はその柔軟性にあると思います。マクドナルド北京店は特殊な一例で、2,000㎡の太陽光パネルを設置するのは多くのプロジェクトでは難しいと思います。地域のモールに敷地を借りて営業している店舗では同じ規模で太陽光パネルを設置することは難しい状況ですがLEED Zeroを目指しています。屋根に小規模ですが太陽光パネルを設置し、バッテリーで蓄電をしています。主に照明にそれらのエネルギーを使用しています。太陽光発電の電気以外はオフセットを利用しています。グリッドの供給のみに依存するのではなく、ネットゼロに近づくための最初の試みを開始することが重要です。 Q4. エンボディドカーボンがLEED Zeroの評価対象に入ってくる可能性はありますか？ エンボディドカーボンはLEED Ver.5で取り入れられる予定です。現在、昨年の9月にリリースされたO+Mベータ版と今年4月にリリースされたBD+CおよびID+Cシステムには、それぞれのエンボディドカーボンのポイントが設定されています。4月には基準に関するパブリックコメントを集める予定です。公式なVer.5は来年の第一四半期に発表の予定です。 Q5. エンボディドカーボンの評価期間はいつですか？ 運用前の建設段階までは追跡しません。運用期間中にリノベーションや内装工事を行う場合には、そのエンボディドカーボンは対象となります。 Q6. エンボディドカーボンを算定する手法はEPDの積み上げなのかなど、どのように算定すればよいでしょうか？ リノベーション中のエンボディドカーボンを算定する場合には２つの部分があります。ひとつは建材のエンボディドカーボン、もうひとつは輸送中と建築現場で使う機材のエンボディドカーボンです。経験上、建築現場での数値はかなり小さく、算定がしやすいと思います。燃料と電力の使用量だけを算定すればよいからです。難しいのは建材の製造時のエンボディドカーボンの算出です。EPDレポートの提出が必要となります。EPDレポートは建材製造過程と建築現場への輸送における二酸化炭素の排出量を算定します。LEED Ver.5はまだ十分なリファレンスが出していないので詳細は今説明できませんが前のバージョンと比べると違いはあると思います。前のバージョンでは提出されたEPDレポートの算定数値の確認のみでしたが、LEED Ver.5はデータをベースにしたパフォーマンスを確認することになります。EPDレポートの数値だけでなく、二酸化炭素排出量の算定が要件になると思います。まだVer.5の要件の詳細はリリースされていないのであくまで私の想定ですが、数値の算定についてはあまり深刻に考えなくても問題はありません。算定に関しては難易度を下げています。以前はデータを専門家が発行することが決まりでした。最近は、算定プロセスが国際基準の要件を満たしていることを証明する必要がありますが、プロジェクトチームがデータを提出することを推奨しています。ハードルは低くなっています。 Ｑ7. エンボディドカーボンを削減する方法にはどのようなものがありますか？ まだ要件の詳細は基準を制定していないので申し上げられませんが、グリーンパワーはエンボディドカーボンを無効にするためには利用できません。グリーンパワー、IEC、EACのエネルギー認証は電力を無効にする時のみに利用が可能です。アウトサイドの再生可能エネルギーを推奨するのはそのためです。カーボンオフセットは課題に直面しています。いくつかの大企業からカーボンオフセットの利用には上限があると聞きました。そのため、アウトサイドの再生可能エネルギーの使用はいずれのプロジェクトも直面している重要な課題です。 Q8. 太陽光パネルの例が多かったが、他に、風力、地熱を使って発生させる水素などについてはどうでしょうか？ 再生可能エネルギーの話になると多くの方は太陽光エネルギー、中国でも急速に進歩している建物一体型太陽光発電の運用を考えると思います。LEEDでは他の再生可能エネルギーも評価することが可能です。太陽光エネルギー、ソーラーパネルのみが可というわけではありません。中国での太陽光エネルギー以外の再生可能エネルギーの例をあげると、米国スポーツメーカーのNIKEをご存じだと思いますが倉庫配送センターが中国にあります。そこでは太陽光パネルだけでなく、２基の風力タービンも使用しています。この風力発電もLEEDの評価システムで評価されています。彼らが風力を使う理由は風力発電プラントの製造専門企業が長年のパートナーであり、今年から初トライアルで風力発電プラントの利用取り組みが都市部において開始されました。政府もまたデペロッパー、企業に対して太陽光パネルだけでなく、新たな再生可能エネルギーの探求を推奨しています。水素エネルギーに関しては他の再生可能エネルギーに比べて中国では開発普及が迅速ではありません。あまり情報がないのですが、知る限りでは大企業一社が水素エネルギーに取り組んでいます。主要な再生可能エネルギーは太陽光、風力などです。 Q9. LEED Zeroを取得するメリットを知りたい。（例えばLEED O＋Mの再認証の際に加点になる、有利になる、GRESBでの評価が上がるなど）。LEED Zeroを日本市場で広めていきたいと思うが、日本市場ではZEBがあり、エナジーゼロであれば、Energy Starが基準と思われますが、日本ではすでにBELSという、日本で開発されたエネルギー効率を高める基準の達成を目指している企業が多いです。LEED Zeroをアピールするために新たな認証を取得することに消極的になる気がします。 LEED Zero認証を取得するメリットは第三者機関の認証が得られるということです。近年では、政府も(見せかけだけの環境配慮である)グリーンウオッシュを阻止したいと考えています。大企業の多くがカーボンニュートラルの実施を宣言し、2025年までに目指すと言っていますが、LEED Zero Carbonは基準が厳正で公的規格です。ステークホルダーにも自己申告ではなく、第三者機関の認証であると説明ができます。グリーンウオッシュをしている疑いで政府から警告を受けている企業があり、政府やステークホルダーの信頼を得るにはLEED Zeroのような第三者機関の認証が必要となります。現在その企業はLEED Zero Carbonの認証取得を目指しています。このような点がLEED Zero認証取得のメリットだと思います。 もうひとつLEED Zero認証取得のメリットを付け加えるとしたら、LEEDと同様に国際的に認知されている認証であるということです。ESG投資に関してもLEED認証は投資家にも認められています。香港を基点とする不動産デベロッパー大企業が3千万ドルのサステナビリティ関連ローンを集めました。これはサステナビリティのベンチマークの一つとしてその企業が所有する全商業ビルがLEEDゴールド認証以上を取得する必要があることを意味します。そのローンをサポートする銀行も国際的金融グループに属しています。シンガポール銀行、香港銀行、台湾銀行、HSBCなどです。国際的な投資家はLEEDを認知していると思います。その点がLEED, LEED Zero認証取得の最大のメリットだと思います。 Q10. グリット電力の排出係数について、日本を含めたアジアと欧米では排出係数が全く違うので、同じ省エネをしても排出係数によって減り方が違います。LEED Zeroはひとつの数字を使うことでユニバーサルにしようとしているのかそれとも今後もっとローカリゼーションをしようとしているのでしょうか？ 標準的な排出係数は国連IPCCからのものです。世界中の平均的な排出係数を算出します。これを使う理由はすべての国が排出係数を厳正にトラッキングしているわけではないからです。また、LEED Zeroでは排出係数の算出にとても便利なツールを提供しています。エビデンスがあれば違う排出係数が使えます。 2020年に遡ると中国のプロジェクトでは二酸化炭素排出量の算出には2012年の排出係数を使う必要がありました。中国政府が係数を8年間アップデートしていなかったからです。当時、LEED認証でメリットを得るにはスタンダード係数を使う方が良かったのです。中国が2021年にカーボンニュートラルの計画を公表してからは排出係数もアップデートされました。数値は激減しました。データは最近の技術の発展に追いついていない場合があります。LEEDとしては排出量の算出に便利なツールを提供することを目的としています。 Q11. 再生可能エネルギーの説明がありましたが原子力発電についてUSGBCはどう考えていますか？ とても興味深いトピックだと思います。原子力エネルギーはクリーンエネルギーという見解ですが、再生可能エネルギーではありません。再生可能エネルギーのというのは、オリジナルのコンセプトに立ち返ると、無限のエネルギーという意味です。原子力発電所には耐用期間があります。原子力エネルギーはクリーンエネルギーであり、排出係数はゼロに近いので、再生可能エネルギーとは認められませんが、中国政府は原子力発電開発に投資はしています。中国政府のエナジートランジションの目標は2060年にはカーボンニュートラルを達成することとしています。エネルギー消費量の80％を非化石エネルギーで賄う計画です。原子力エネルギーの重要性は高いと思いますが、再生可能エネルギーとしてはLEEDでは評価することができません。他の国際機関も同様の考え方だと思います。