プロジェクト名:順天堂大学新研究棟
建設地:東京
認証システム: LEED v2009 BD+C: New Construction
認証取得:2021年5月27日
認証レベル:プラチナ
インタビューを受けた人:
順天堂大学 飯田 稔 様
鹿島建設 太田 浩司 様、野口 康仁 様
インタビューした人:
GBJ学生ユース 中谷優太
グリーンビルの考え方を学び、若い世代に発信していくことを目的に活動しているGBJ学生ユースのイベント「GBJ Youth Summer Program 2023」にて、大学法人として日本初のLEED v2009-New Construction版・プラチナを取得された順天堂大学新研究棟へ見学に伺い、学校法人順天堂の飯田さん、設備設計を担当された太田さん、野口さんにお話をお聞きしました。
―まず、今回のプロジェクト概要を教えてください。
順天堂大学 飯田 稔(以下、飯田):本建物はエコホスピタル・エコキャンパスの実現に向けて計画・実施してきた再編事業の集大成として整備されました。他の範となる国際的な研究拠点の整備として、環境に配慮した施設づくりを大きなコンセプトに掲げ、国内のCASBEE認証取得に加えて、国際的な環境格付けであるLEEDでのプラチナ認証取得を目指しました。
―大学施設としての認証取得は国内ではめずらしいプロジェクトだったと思いますが、LEED認証プラチナ取得にあたり、設備的に工夫された点は何でしょうか。
野口 康仁(以下、野口):実験施設ですのでドラフトチャンバーの換気によるエネルギー損失が大きく、その対策を行いました。通常では常時換気が行われているところを不在時に風量を抑えられるような変風量制御を取り入れることでエネルギーロスの削減に成功しました。
その他エネルギー面に関しては、コージェネレーションシステムや太陽光発電、CO2濃度センサによる外気量制御などを導入し、LEEDにおいて最も大きな比重を占めるエネルギー効率の項目でポイントを取得できました。
また、実験用に多く設置されている冷蔵庫についてはフロン冷媒使用のものへの規制がありましたので、認証に対応しているものに入れ替えを行いました。
―LEEDはアメリカ基準での認証ですが、日本で取得を目指すにあたっての苦労などはありましたか?
野口:ポイント取得に関する各項目はASHRAEなどのアメリカの論文に基づいています。項目をクリアするための条件の細かい内容について、判断が難しい箇所はコンサルタントなどを通して審査機関とコミュニケーションを通して進めていきました。それでもCO2濃度制御センサの設置場所など、細かい箇所の意思疎通不足でポイントが認められなかった項目もありました。
また、水資源が豊富な日本に比べて節水の基準が厳しいため、それらをクリアするための対策には苦労しました。新研究棟では雨水利用や節水器具を取り入れることでクリアしました。
―実際にラボを見ていると、従来の研究・実験室よりも室内が明るく視線が通る印象を受けます。
太田 浩司(以下、太田):建築計画のコンセプトとして先進的なオープンラボ空間を掲げています。フロア中央の共同実験機器スペースを挟むように基礎系と臨床系の共同実験室であるオープンラボを設けるように配置しています。ラボは研究室毎に区切るのではなく繋がっていることで、研究員の交流による偶発的発見の場を創出しようとしています。また、仕切りを減らすことでLEEDの要件でもある、眺望の確保にもプラスに働いています。
―建築計画的なコンセプトとLEEDの室内環境の要件がうまくマッチしているのですね!
ペリメーター部分にスタッフルームや飲食スペースが配置されており窓も大きいようですが熱負荷は問題ないのでしょうか?
野口:はい、建物には大きくアウトフレームが出ており日射のコントロールを行うことで冷房負荷を削減しつつ快適な室内環境を確保しています。
―なるほど、アウトフレームは低層部とのファサードとも調和しているように感じます。
飯田:低層部のファサードについては、順天堂180年の歴史の象徴として1906年に建設され関東大震災で焼失した「順天堂醫院旧本館」の翻案として再現されました。
―順天堂の歴史を継承しつつ、環境配慮の国際的な先駆的建物としてこのプロジェクトが行われたことがよく理解できました!この度は貴重な見学の機会をいただきまして、ありがとうございました。
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