人々のクオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)向上を目的とする認証プログラムで、自然生態系、エネルギー、水、廃棄物、交通、その他QOLに関して押さえるべきポイントを網羅する評価の枠組みになっています。
いかなる形態、規模、発展段階にある都市やコミュニティにも適用可能で、公共、民間の開発主体の別なく、また新規開発や成熟した既存の街にも適用可能なように制度設計されています。計画、開発、運営という各段階の手法に改革をもたらすものとして、今後、持続可能で責任ある都市/街づくりを目指す自治体経営者や街のリーダー、プランナー、ディベロッパーに利用されることを想定しています。
以下に挙げる、計画段階(プラン&デザイン)か既存のエリアか、シティーかコミュニティかの組合せにより、4通りの認証プログラムが選択できます。
プラン&デザイン(Plan and Design):計画、設計の段階にある新都市・コミュニティに対する評価基準。
既存(Existing):既存の都市やコミュニティ、または75%以上建設が完了している新設都市、または再開発街区に対する評価基準。
シティー:州、郡、市(日本では都道府県、市町村に)等で規定された行政単位、または場所を指す。アジアなどでは民間部門によって管理する「シティー」も存在する。主な申請主体は、市または自治体の管理機関。
コミュニティ:街区や都市圏など都市化された「シティー」以外の範囲を指す。民間部門によって所有・開発されたエリアは自らシティーと定義していない限りコミュニティに属する。主な申請主体は地域、地区、経済圏、キャンパス、軍事施設など。
自治体を認証する LEED for Cities and Communities 既存(Existing)v4.1項目の内容
統合的計画とリーダーシップ
誰もが暮らしやすい都市を作るための検討チームには様々な職能の人がかかわる必要があります。
都市計画や建築の専門家だけでなく、福祉、教育、サステイナビリティ、データ担当の役割も重要です。
目標とそれに向けた計画を立て、進捗を計り、ギャップを分析し、改善方法についてワークショップで話合うことが必要です。
グリーンビルポリシーとインセンティブ
自治体の所有する建物の環境認証取得床面積比率の目標を立て、進捗を計ることにより、グリーンビルディングの普及を促進します。
グリーンビルディングの建設に対するインセンティブの付与により、グリーンビルディングの普及を促進します。
民間所有の建物のエネルギーデータ開示プログラムの構築、運用を推奨します。
エコシステムアセスメント
域内のトポグラフィー、土壌、植生と生物生息域、水文学と水生生態系の調査を行うことを必須要件に定めています。
グリーンスペース
すべての人がアクセス可能な緑地に対して、面積に応じてポイントを付与します。人口一人当たり13.5㎡の緑地が徒歩800m以内にあることが目標です。
自然資源の保全と復元
人口一人当たり80㎡以上の天然資源に覆われた敷地の面積創出をポイント取得の要件としています。
光害の抑制
住宅地において、天の川の眺めを守ることを評価項目に定めています。そのためには街路灯や夜間の照明によるスカイグレアを抑制する必要があります。
レジリエンス計画
都市の脆弱性の検証とキャパシティアセスメント、レジリエンス計画策定を評価します。
交通パフォーマンス
VMT (Vehicle Miles Traveled)を用いて交通による排出量を評価します。VMTとは地域内の車両ごとに走行距離を乗じた総和として計算されます。
コンパクトでミクストユースのTOD
半径800m範囲の、歩いて用が足せるCompact and Complete Centerの建設を推進します。これはスマートグロースとニューアーバニズムの中心的な概念です。
交通機関のクオリティ
居住者の通勤手段の分析を推奨します。その上で、安全で十分な運行本数のある公共交通機関の近接性を評価します。
代替燃料車
公共の駐車スペースに対して電気自動車チャージャーや、化石燃料以外の代替燃料補給ステーションの建設を評価します。
スマートモビリティと交通ポリシー
スマートな交通システムをサポートし、旅客情報サービス、自動速度規制、交通監視、GPS、信号の同期、統合発券システム、リアルタイム駐車場管理を評価します。
優先度の高い敷地の選定
歴史的建物の保全、グレーフィールドやブラウンフィールドの活用、低所得者コミュニティへの投資を評価します。
水へのアクセスとクオリティ
飲料水の衛生基準、下水処理の質、雨水排水の水質を評価することにより、飲料水の安全を確保し、水源を涵養します。
節水性能
市民一人当たりの上水使用量を計測し、世界中の都市のデータでのベンチマークにより獲得ポイントが決まります。
統合的水マネジメント
区域内で使用できる水資源の把握を促し、自然の水循環や水源涵養を促進します。
ストームウォーターマネジメント
過去に発生した洪水の調査と中規模程度の雨を区域内で浸透するようなグリーンインフラ拡充により、洪水の発生を抑制します。
スマートウォーターシステム
年1回以上の水監査の実施、スマート水量計の設置、水収支の把握を推奨します。
パワーアクセス、信頼性、レジリエンシー
すべての住民への電力サービスの提供を目指し、信頼性とレジリエンシーを高めることを必須の評価項目としています。
エネルギーと温室効果ガス排出パフォーマンス
地域内の全エネルギー消費量とCO2排出量を計測し、世界の都市データベースによりベンチ―マークすることで取得ポイントを算出します。
エネルギー効率
インフラの高効率化を目指し、街路灯、上下水道、地域冷暖房システムの効率性を規定します。
再生可能エネルギー
オンサイト、オフサイトの再生可能エネルギー発電と、電力証書の購入により、再エネの普及を促進します。
低炭素経済
市の単位GDP当たりのGHG排出量(炭素生産性)の報告を求め、炭素排出の削減を目指します。
グリッドハーモナイゼーション
エネルギー負荷のピークを低減するため、動的価格設定とデマンドレスポンスを推奨します。
固形廃棄物管理
廃棄物の分別、処理、リサイクル材の回収を促進するため、計画書を作成し実施することを推奨します。
廃棄物パフォーマンス
廃棄物の分別、リサイクル率に基づくパフォーマンス計測により、一部のスコアを算出します。
特殊廃棄物処理監理
廃棄物の総重量とリサイクル率を把握することを評価します。
責任あるインフラ材料の調達
インフラの建設材料について、環境配慮することを推奨します。リサイクル材料の使用など環境負荷を低減する材料の選択が必要です。
スマート廃棄物管理システム
廃棄物収集システムの自動化を評価します。具体的にはパイプネットワークにより廃棄物自動搬送システム、または、ごみの充填レベルを自動で把握するセンサーバケツの採用を推奨します。
人口統計アセスメント
地域ごとの人口動態メントの実施が必須項目に定められており、マイノリティ、低所得、言語的孤立、幼児、高齢者、住宅密度、公共施設の立地などを明らかにする必要があります。
クオリティオブライフパフォーマンス
教育率、公平性、経済的繁栄、健康と安全に関する9つのKPIで世界の都市とベンチマークすることが必須項目として定めらえています。
トレンド改善
そのうち、高卒率(卒業資格を持つ人の割合)、高校卒業率(入学した人のうち、卒業する人の割合)、中小企業率、失業率、貧困率、生活賃金を満たす世帯割合、暴力犯罪率、喘息率、高血圧率、肥満率のうち4つ以上について、ベースラインを設定し改善率を計ることが要件として定められています。
分配の公平性
男女や特定の社会文化的グループ間の公平性が高い場合にポイントが取得できます。
具体的には、一人当たりの収入、労働機会、卒業率、失業率、公園・図書館・レクリエーションセンターなどへのアクセスの平等性について評価します。
環境正義
女性・子ども・低所得者層・特定の地区住民・社会文化的グループが、健康や環境に関して有害な状況にさらされないように対策を講じることを推奨します。
具体的には、一人当たりの収入、身体障碍、病気、大気、騒音、水質汚染、土壌汚染、自然資源の破壊、地域社会や経済の破壊、公共/民間サービスの低下、立ち退き、コミュニ地の分断などが有害な状況に該当します。
住居と交通のアフォーダビリティ
公共億通まで徒歩400m以内の賃貸、分譲の質の高いアフォーダブルな住宅と交通手段の利用が可能なことを評価します。
市民とコミュニティ参加
性別、人種、民族を問わず、地域住民にコミュニティの未来を形づくる力を与えることを評価します。
市民と人権
人種、性別、肌の色、宗教、出身国、障害の有無、年齢、性的志向、配偶者の有無、家族の状況にかかわらず、質の高い生活を送れるような政策を採択することを評価します。