第52回GBJセミナー[講師の音声付資料] LEED・WELL と働くこと

2019年7月17日(水)開催 

第52回GBJセミナー

<募集時セミナー案内はこちら>

主題:建築・都市の「環境」「健康」国際基準、LEED・WELL と働くこと (入門編) 若者・女性・シニアも必見!

日時:2019年7月17日(水) 18:00-20:00

会場:イトーキ 東京イノベーションセンターSYNQA 2階セミナールーム

 

ダイジェスト版(約12分)

 

 

講師の音声付資料(全編)

平松 宏城 氏(GBJ共同代表理事, (株)ヴォンエルフ代表取締役)

      LEEDフェロー、LEED AP BD+C、ND、USGBC ファカルティ

 

 

1部 LEED, WELL, SITES, GRESB 基礎編

 

目次
世界各地のグリーンビルディング評価制度

日本でも取り組みが増えている国際標準の性能評価システム

LEED

トップランナーの優良事例を共有し、さらに前へ前へ更新、動的基準

⽶国発の建築物の認証システムLEED 国際的な普及の状況

日本におけるLEED 普及の軌跡

LEED NDの序文には「ジェイン・ジェイコブス」の言葉の引用

なぜ皆がポートランドに魅力を感じているのか

Beyond Green(環境性能を越えて)

WHO憲章前⽂での「健康」の定義

こうすれば健康な空間が作れるという処方箋

行動の変革を促す

GSAが連邦政府の施設での認証取得義務化

Navy Pier South Deck SITES v2 ゴールド認証

University of Texas at El Paso SITES v2 シルバー認証

社会的責任投資フォーラム × 都市緑化機構 (2006)

環境配慮はただのコスト 価値観の大転換 違法から適法に(2006)

価値観の大転換 2006年(違法から適法)→ 2015年 パリ協定とSDG’s

Example: Office Portfolio Manager: CommonWealth Partners

ESG投資が及ぼす世界企業、持続可能都市への影響力 サステイナビリティへの向き合い方の劇的変化

M & V (Measurement & Verification)建物も街も都市もKPIを測り、ベンチマークする時代

Arc -> Webベースのデジタルプラットフォーム

Arcでベンチマーキングできる5つの主要評価指標

LEED for シティー、コミュニティーは運用データだけで認証取得可能

LEED に取り組む主体(企業、大学、自治体)動機付け

de‐factoを使ったサステイナビリティの実現 + 世界に向けた発信

LEED / Arc の⽬指す7つのゴール

 

 

2部 ⾒えない価値を可視化するしごと

見えない価値を可視化する  作った上で、顕在化させる

F. L. オームステッド セントラルパークを作った男  歴史から問う公共空間の価値

SDGsの時代に、都市と街の見えない価値を可視化する評価システム

ESG投資(巨額の運用資金)が向かう、長い時間軸の中で 価値を維持する不動産、価値が発現する都市・街とは

2013年 世界中で進む都市化と 都市間 / エリア間競争

世界の主要都市では、各単位での競争が始まっている

都市の抱える問題

ワシントンDC全エリアの43%は道路 NY市の28%は道路

SDGsの時代に、都市と街の見えない価値を可視化する評価システム

(次世代)住民、企業に選ばれる街になるにどのような転換が必要か

Integrative Design インテグレイティブ(統合的)デザイン

屋内が、安全・安心・便利・快適でありさえすれば心は安寧ですか?

LEEDが目指しているのはQOLの向上
WELLが見ているのは「心身」の健康

国連加盟国は「持続可能な開発(発展)のための2030アジェンダ」を採択

アフォーダブルハウス

無理なく住める住宅の不足が、世界的な危機に

日本の住宅政策と福祉政策の乖離

Decent Work and Economic Growth 

高齢化と引きこもりと年金問題 非正規雇用と家賃の高さからくる相対的貧困 と教育格差、貧困の再生産は、全部つながっている

選ばれるために必要な転換と適確な情報発信

日本の引きこもりは、Agora phobia…ではない?

多様性の確保・・・言うは易し

建物や街をグリーンな場に転換することが仕事になる

街に人を、都市に企業を、海外からツーリストを

もうニッチではない

SDGsの時代に、
都市と街の見えない価値を可視化する評価システム

LEED は、SDGs を都市で「カタチ」にするためのガイドライン

都市や街に対して SDGs が求めているゴール

シュタットベルケって知ってますか?

SDGsをカタチにする新しいビジネスモデル
シュタットベルケのサーキュラーエコノミー

財源はある

日本が「先駆的な温暖化対策に取り組む必要がない」とさ
れた3つの根拠

横浜銀行本店ビルにおけるエネルギー削減効果

QOLの高さを感じられる街であり続けるために

LEEDは、評価制度にして評価制度にあらず

 

 

Q&A

 

Q1. 改修、リニューアルはWELL評価の対象外か?

 

既存、改修も新築と同じプログラムで評価、認証できる。改修範囲が建物の一部であっても全体であっても評価は可能。

 

Q2. 各国での色々な評価制度がある中で、世界的にLEEDが最も認証件数が伸びているという説明があったが、各国においてLEEDが特に優れている、気に入られた点があって、このような動きになっているのでしょうか?

 

日本にもCASBEEの評価制度があって、なぜわざわざ外国の評価制度を使う必要があるのかという話が昔からあり、LEEDとCASBEEの比較を行ったこともあった。LEEDは、世の中の技術のレベルや規制に合わせてバージョンが進んでいくごとに厳しくなっている。一方でCASBEEは当初からあまり変わっていない。LEEDは評価制度を動的なものと捉えてマーケットと対話しながら世の中を引っ張っていくというところが1つある。また、国境を超える不動産のプレーヤーに対してもアプローチを積極的に行ってきたし、啓発もしてきた。また、最初はハードルの低いところ、これだったらできそうというところから始めて、だんだん精緻化させていくのがとても上手だと思う。特定の少数のグループだけで作るのではなく、色々な人を混ぜて、パブコメを取って、その意見に対して、反映する・しないということを真摯にやってきた。アメリカにも似たような制度はたくさんあったが、色々な淘汰の歴史があって、最後に残ったのがLEEDとなっている。

 

Q3. ARCのエネルギー、水、廃棄物、交通、快適性の5つの指標に重みづけがなされているという事であったが、その重みづけは毎月の情報の更新によって更新されていくのか、更新される場合は、どのように重みづけが決められていくのか?

 

LEEDでは、立地や敷地に関するところ、水、エネルギー、マテリアル、室内環境で100点、革新性と地域特性でプラス10点となっており、基本項目100点の中で、エネルギーは40%弱、水10%、マテリアル10%、室内環境と敷地が15%ずつというように配点が決まっている。この割合は、スタンダードを科学的に色々な調査機関と話し合いをしながら当初決めてスタートし、必要に応じて少しずつアジャストしてきた歴史がある。おそらくARCの配点もそれを踏襲して作っていると思われるため、ARCの配点自体はバージョンや年度が変わっても変わらない。自分達が入れるエネルギー消費量とかごみの排出量は変わるが、世の中の動きに合わせて位置付け(世界の同種ビル、コミュニティー、都市と比較した際の相対的な成績)が変わる。

 

Q4. ゲストハウスを新規事業として立ち上げようと思っているが、LEEDの評価対象となるか?

 

LEEDは新築であれば新築版、運用であれば運用版、インテリアであればインテリア版で評価する。既存ビル版はビル全体でも一部のインテリアでもARCを使った認証で随分取りやすくなって来ている。ARCは月に1回データを入れれば点数が出てくるというようになっている。ゲストハウスはホテル等を評価するホスピタリティ版というのがあり、それで認証を取ることもできるし、既存であればARCを使って比較的難易度を低く取り込むことができる。

 

Q5. LEEDやSITEなどの認証システムが世界を牽引して行くリーディングプログラムだという話がある一方で、日本で取り組まれているLEED案件は、かなり条件が整って、資金も確保できているような恵まれたプロジェクトでないと認証に踏み切れない部分もあって、大きなハードルがある印象。一方で、貧困や高齢化など、持続可能性という視点で、本当に考えていかなければならない場所があり、都心の不動産原理で動いていかない既成市街地や地方都市がある。そういった部分に対してLEEDなどの認証制度がどういうアプローチをとれるのか。

 

LEEDはハードルが高く、審査も厳格であり、それに対応する根拠資料をパワーをかけて作っていかなければならない。コンサルティングの費用も決して安くは無い。それでも今は相当の数のプロジェクトがある。LEEDは随分苦労して、厳格さをアップデートし続けてきて、競争や淘汰を経て、ある時点でブランドとして確立しており、利用者を桁違いに増やしてきている。そしてESG投資家のような方たちから検証結果を形として見せるよう要請があった時に、金融機関は厳しい説明責任を負っていて、白黒を明確に示すことを求めるので、これに対してLEEDはきちっとこたえられるものになっている。そういう世界に対し、アメリカで所得の低い人の街でLEED-NDに取り組む話があり、それに対し、評価軸を当ててみて、これはできていて、これはできてない、これをやればシルバーが取れるというような検討をするツールにもなる。認証を取るのはお金がかかるが、評価を当ててみることはできる。どこが足りていてどこが足りていないか見極めを行うためにツールを使う。それで十分だと思うし、それにプロの知見が必要であれば、そこに力を貸す人は周りにはいると思う。地方のプロジェクトは最近増えているが、このように認証を取らずに評価だけというやり方と、ARCであれば1500$で使えるので、費用負担能力が高い巨大なプロジェクトでなくても取り組めるという意味ではハードルは下がってきていると思う。

 

Q6.短期的に収益を上げられる都市ではなくもっと長期的な視点で都市を見ていく世界の動きがある。LEEDなどの認証を取得する主体と、実際に建物の中や街で生活して使っていく利用者がいて、長期的には利用者の視点が必要なのではないかと考えるが、LEEDなどの認証制度はメンテナンスや運用を評価していくシステムがあるのか。

 

LEEDは相当先のことを見て、制度設計をしている。バージョンが変わると、現時点での技術やビジネスプラクティスでは、到底無理な内容が出てくるが、何年か経つとそれが当たり前になって来る。割と長期的に向かう方向を決めて作られているので、長期的な立場を求められる人にとっては使いやすいツールだと思う。 運用段階については、今までは建物も新築の評価がメインで、街も再開発、街開きしたところで終わりであった。今はそこから、モニタリングの世界に入ってきているので、使う人たちの努力次第で点数が上がりもするし、下がりもする。定期的にデータを入れて、データが点数になってスコアが決まり、レイティングが決まることになるので、デベロッパーだけが頑張ればよい世界ではなくなっている。住人やテナントなど全員が一緒にやらないといけなくなって来ている。東京だと、低炭素をやらなければならないので、キャップ&トレードで総量規制がかかっているが、デベロッパーだけでなくテナントにも協力を求め始めている。それが、エンゲージメントであり、色んな人が関わらなければならないというのがようやく始まって来ている。レイティングシステムも定期的なモニタリングを求めるようになっており、利用者との関りは随分出てきていると思う。

 

Q7. 先ほど、認証を取らなくてもLEEDの評価を当てはめてみるのも有効だというお話があったが、その場合、認証は取っていないがLEED基準を満たしているとか、環境に配慮しているということをPRするというのはOKなのか。

 

目的によるのでは。テナントのリーシングには、LEEDのGOLD相当のような言い方をしても信用してもらえないと思う。町内会とかコミュニティをやっている人たちが、街づくりの方向性を決める時の指針として使うという形はあると思う。そこに補助金を出す企業もあるので、その補助金を使って実際に認証を取るというような事例はアメリカではけっこうある。

 

LEEDの認証機関としては、そのような使われ方をすると、商業的には成立しないと思うが、目指す方向が同じだからOKとしているのか、そのような使い方はしてほしくないと思っているのかどちらなのか。

 

民間の企業がLEED相当だという事でプレス発表するというのはあまり良しとはしていないと思う。それがNPO的な所であれば、特に問題視はしていないし、そういうケースはたくさんある。取っていないのにリーシングに使うということについては褒められたことではないし、信用もされない。 最近中国では、ボリュームサーティフィケーションといって、スタバなどでも行われているが、全店が認証取得するというプログラムがある。マクドナルドは中国の1800店舗全部やるという。そういうやり方もあれば、100棟ビルを持っているけれどコアの10棟のみ認証取得して、残りも自社の基準で同じようにやっているから信用してください、というような発信をしているデベロッパーもある。何もやっていないのにGold相当と言っても信用されない。

 

Q8. WELLに取り組む建物が広がっていくと、健康性が高い建築が増えてよいということであるが、アフォーダブルハウスという視点からすると、そういう健康性の高い建物は賃料が上がってしまうので、低所得者層の方たちはそこに住めないという矛盾が生じるのではないか。

 

 

WELLはショーケースであり、ここまでやれば完ぺきというものをすべて揃えていて、全部やればお金がかる。取り組む人が増えてくれば、対応するためのコストも下がってきて、対応する製品も競走原理が働いて安く調達できるようになる。徐々に安く取り組めるようにはなるが、フル装備でやればかなり高くなるので選択することになる。アメリカのアフォーダブルハウスでよくやるのが断熱の強化。それをやれば 少ないエネルギーで冬を過ごせるし、冬に停電が起きても耐えられない、生存が脅かされるということにはならない。そこだけは押さえておこうという形でウェルネスとレリジエンシーを担保する。やらなければいけないことはたくさんあるが、急所のここだけということで対応している事例はたくさんある。どれをやればコスト対効果で最も有効であるのかという研究は日本ではされていないと思うので、是非研究して頂けるとよいと思う。

 

 

 

 

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